JR脱線事故で電車が突っ込んだマンションとの住民による話し合いが行われた。マンションを購入時の価格で買い取る補償方針を提示。これに対し、住民側は「それでは元通りの住環境は取り戻せない」などと反発し、方針を受け入れず、物別れに終わったとの記事が報道されていました。(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050606-00000000-maip-soci

記事によるとマンションの住民からは、「我々に落ち度はない。それを踏まえて上乗せすべきだ」とか「もともとあのマンションは当時格安価格だった。買い取り価格と言うのは安すぎる!同様の物件が買えない」等の不満の声が上がっています。確かに、マンション住民には落ち度がなくこの主張はもっとものように聞こえます。しかしながら、私的に言わせてしまえばこれはJR側の大幅な譲歩であり、一定の評価は出来ると考えています。

確かに住民側の意見はもっともなのですが、この住民の意見を通すには最高裁の判例をひっくり返すと言う前代未聞の作業が待っているのです。実は、知らない人が多いのでぜひ覚えておいてほしいのですが「修理費用が時価を上回る場合は、補償は時価で良い」という最高裁の判断によって、法律上の損害賠償は時価で良いとされているのです。これは、「同じ物が修理より安い値段で買えるのだから、高額な修理費用を負担する必要はない」という考え方によるものです。従って、修理にどんなにお金がかかろうと、時価相当の補償しかもらえないことになります。

今回JR側が提示している金額は買い取り価格です。時価額とは、その時のものの値段を差すので買い取り価格が時価額よりも高いことは明白です。つまり、本来ならJRは住民に時価額の提示をすれば(法律的に)いいのですが、買い取り価格を提示することによって最大限の誠意を示していることが、少し法律に詳しい人なら垣間見ることが出来ます。

あるマンションの住民は「購入価格で買い取ると繰り返すばかり。ああいう対応しかできないのか」とか「元通りの住環境を求めているだけなのに、言葉を聞き入れる態度がない。先の交渉を考えると、とても不安だ」 との報道がなされているがこれは法律的に考えてもJR側の大幅な譲歩であり、ああいう対応しか出来ないのかと憤っても法律的にこれが最大限なのです。従ってこのような意見を言うこと自体が住民側には申し訳ないのですがまったく持ってナンセンスであり、垣内社長が上乗せには否定的な姿勢を示しているのも当然と言ってしまえば当然なのです。

それでは、住民側はこの価格をすんなり受け入れるしかないのでしょうか?そんなことはないのです。実はこの時価額、一度調べたほうがいいケースがほとんどでその結果、時価額の引き上げが出来る場合が非常に多いのです。と言うのも、時価額というのはおそらく何かの書籍物などを参考にして決めているのですが、実際の店頭価格との開きがある場合がなぜかほとんどなのです。つまり住民は、「実際の店頭価格」を調べて、その金額に差があれば、「実際の店頭価格」で補償を受けるべきです。これが本当の「時価」になるわけです。つまり、住民側は何を基準にJRは買い取り価格を主張してきているのか。自分たちの住んでいるマンションと同等のマンションの時価額、買い取り価格はいくらかを調べ多少なりとも上乗せをする努力をする必要があります。

そんな面倒なことは、JRがやれ!と思われる人もいらっしゃるかもしれませんが損害がいくら発生したか」は被害者(損害を受けた側、この場合はマンションの住民)でないと分かりません。自分のモノの価値は、自分自身で証明する必要があります。民法上でも損害の証明義務は被害者ですので、時価の引上げには被害者の努力が要求されます。

または、マンションの補償額とは別に慰謝料請求等をして金額を上乗せする方法もあります。今回はかなりの被害が大きい事故でしたので、相当の慰謝料がもらえるのではと思います。その分をマンションの補償額に補填すればいいのではと個人的には思います。

補償額についての考え方は以上のように時価額が基準になります。つまり、法律的には今回のJRの買い取り価格の提示はJR側の相当な譲歩になるわけです。

この問題、時折交通事故で問題となる場合が多いので、皆さんも覚えておくと損はないと思います。

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